「親が認知症になってからでは遅かった……。」
これは介護を経験したご家族から、実際によく聞く言葉です。
認知症になると、介護だけでなく、銀行口座の管理や介護サービスの契約、施設入居など、多くの場面で本人の判断能力が必要になります。
そのため、判断力があるうちに話し合いや準備をしておくことで、将来の負担を大きく減らせます。
私は介護現場で、多くのご家族を支援してきました。
その中で感じるのは、準備をしていたご家庭ほど、介護が始まってからも落ち着いて対応できていたということです。
この記事では、親が認知症になる前に家族で準備しておきたい5つのポイントを、介護経験をもとにわかりやすく解説します。
※本記事で紹介するエピソードは、複数のケースを組み合わせた一般化した例であり、特定の個人を指すものではありません。
親が認知症になる前の準備が大切な理由
認知症は「物忘れが増える病気」と思われがちですが、実際には判断力や理解力にも影響を及ぼします。
例えば、
- 銀行で預金を引き出す
- 不動産を売却する
- 介護施設へ入居する契約を結ぶ
- 保険の手続きをする
など、本人の意思確認が必要な場面で手続きが難しくなることがあります。
介護現場でも、
「もっと元気なうちに話し合っておけば良かった」
と後悔するご家族の声を聞くことがあります。
一方で、事前に話し合いをしていたご家庭では、
「父は施設より自宅を希望していた」
「財産管理は長男に任せると決めていた」
など、本人の希望を尊重した介護につながるケースが多くあります。
認知症になってから慌てるのではなく、判断力がある今だからこそ準備を始めることが大切です。
① 家族で介護について話し合っておく
最初に準備したいのは、家族で将来について話し合うことです。
話し合う内容は難しいことではありません。
例えば、
- 介護が必要になったら自宅で暮らしたいか
- 老人ホームへの入居はどう考えているか
- 誰に相談したいか
- 延命治療についてどう考えているか
などです。
すべて決める必要はありません。
「こんな考えなんだね」と家族が知るだけでも十分です。
介護現場では、本人の希望がわからず家族間で意見が分かれてしまうケースも珍しくありません。
少しずつ話をしておくことで、将来の迷いや後悔を減らせます。
② 介護保険制度や相談先を知っておく
介護が必要になってから制度を調べ始めると、手続きや申請だけでも大きな負担になります。
そのため、介護保険制度や相談先を事前に知っておくことが重要です。
相談先として覚えておきたいのは、
- 地域包括支援センター
- 市区町村の介護保険窓口
- ケアマネジャー
です。
「まだ介護は必要ない」と思っていても、相談だけなら早すぎることはありません。
介護保険の申請方法については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
▶【介護のプロが解説】介護保険の申請方法(どこで?何が必要?)を5ステップで徹底解説
また、ケアマネジャー選びについて不安がある方は、以下の記事も参考にしてください。
▶【介護のプロが解説】良いケアマネの選び方は「〇〇」を見るだけ!合わない時の変更法も解説
③ 財産や重要書類を整理しておく
介護が始まると、お金や書類の管理が必要になる場面が増えます。
事前に確認しておきたいものは、
- 通帳
- 印鑑
- 保険証券
- 年金関係の書類
- 不動産の権利書
- 保険契約
などです。
「どこにあるかわからない」
という状態では、必要な時に家族が探し回ることになります。
介護現場でも、通帳や保険証券が見つからず、手続きが何週間も進まなかったケースを見てきました。
また、本人しか暗証番号を知らず、家族が困ってしまうこともあります。
もちろん、無理に管理を任せてもらう必要はありません。
大切なのは、家族が「どこに何があるのか」を共有しておくことです。
なお、預貯金については近年、主要銀行が「代理人カード」や「予約型代理人サービス」など、家族を事前に代理人として登録できる仕組みを用意していることもあります。
家族信託や成年後見制度より手軽に始められる選択肢として、口座のある銀行に確認してみるのもおすすめです。
④ 家族信託という選択肢も知っておく
親の財産管理について考え始めると、「家族信託」という言葉を耳にすることがあります。
家族信託とは、判断能力があるうちに財産管理を信頼できる家族へ託す仕組みです。
例えば、
- 将来、認知症で判断能力が低下した場合に備えたい
- 実家の管理や売却をスムーズに進めたい
- 預貯金の管理で家族が困らないようにしたい
と考えている方に選ばれることがあります。
注意したいのは、家族信託は「契約」によって成立する仕組みであるという点です。
そのため、本人に契約を理解し判断する能力(意思能力)があるうちにしか契約できません。
認知症が進行してからでは家族信託を新たに組むことはできない点に注意が必要です。
一方で、家族信託はすべての家庭に必要というわけではありません。
家族構成や財産の内容によって適した方法は異なり、成年後見制度など別の制度が適している場合もあります。
そのため、「うちは必要なのかな?」と思った段階で、一度専門家へ相談してみることをおすすめします。
私自身、介護現場で「親の口座からお金を引き出せず困っている」「施設の契約手続きが思うように進まない」と悩むご家族を見てきました。
財産管理について不安がある場合は、家族信託を含め、自分たちに合った方法を専門家へ相談してみると安心です。
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⑤ 将来の住まいについても考えておく
「親にはできるだけ自宅で暮らしてほしい。」
そう考えるご家族は多いと思います。
しかし、介護が必要になったとき、在宅介護だけが正解とは限りません。
介護者が仕事を辞めたり、体調を崩してしまえば、家族全体の生活が成り立たなくなることもあります。
実際に、介護疲れから心身ともに限界を迎えてしまうご家族のケースは、介護現場でも珍しくありません。
そのような状況を防ぐためにも、老人ホームや介護施設は「最後の手段」ではなく、「将来の選択肢の一つ」として考えておくことが大切です。
すぐに入居を決める必要はありません。
大切なのは、
- 近くにどんな施設があるのか
- 費用はどれくらいか
- 空き状況はどうか
といった情報を、早いうちから集めておくことです。
慌てて施設を探すよりも、事前に比較・検討できる方が、ご本人にもご家族にも納得のいく選択ができます。
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よくある質問(FAQ)
Q. 親が認知症になってからでも準備はできますか?
介護保険の利用や成年後見制度など、認知症になってから利用できる制度もあります。
ただし、本人の判断能力が必要となる手続き(家族信託の契約など)は難しくなる場合があるため、判断力があるうちから準備しておく方が安心です。
Q. 家族信託は必ず利用した方がいいですか?
いいえ。
家族信託は選択肢の一つです。
また、契約である以上、本人の判断能力が必要なため、検討するなら早めの行動が重要です。
家族構成や財産状況によって適した方法は異なるため、専門家へ相談したうえで判断することをおすすめします。
Q. 老人ホームはいつ頃から探し始めるべきですか?
介護が必要になってから探すよりも、「まだ元気だけど少し心配」と感じたタイミングがおすすめです。
事前に情報を集めておくことで、希望に合った施設を落ち着いて比較できます。
まとめ
親が認知症になる前に準備しておきたいことは、次の5つです。
- 家族で将来について話し合う
- 介護保険や相談先を知っておく
- 財産や重要書類を整理しておく
- 家族信託など財産管理の方法を知っておく
- 将来の住まいについて考えておく
どれも、今日から少しずつ始められることばかりです。
介護は突然始まることがあります。
だからこそ、「まだ大丈夫」と思える今こそが、一番準備を始めるのに適したタイミングです。
家族みんなが安心して将来を迎えるためにも、できることから一歩ずつ進めていきましょう。

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