「最近、親がテレビの音を大きくしないと聞こえにくいようだ」
「会話中に何度も聞き返されることが増えた」
ご家族の「聞こえ」に不安を感じたとき、真っ先に思い浮かぶのが「補聴器」や「集音器」ではないでしょうか。
しかし、この2つ、見た目は似ていますが、実は「医療機器」と「家電」という全くの別物です。
もし選び方を間違えると、効果がないばかりか、かえって耳を痛める原因にもなりかねません。
この記事では、「シニアの暮らし快適ガイド」として、補聴器と集音器の決定的な違いと、どちらを選ぶべきか、介護の視点も交えて分かりやすく解説します。
【結論】補聴器と集音器の決定的な違い
時間がない方のために、結論からお伝えします。
最大の違いは、「使用者の聴力に合わせて調整(フィッティング)できるかどうか」です。
| 比較項目 | 補聴器 | 集音器 |
| 分類 | 医療機器 | 家電 |
| 目的 | 難聴の「聞こえ」を補う | 音を大きくして「聞こえ」を補助する |
| 調整 | 必須(専門家が聴力に合わせ調整) | 不要(自分で音量を調整) |
| 機能 | 不要な雑音を抑え、会話を強調 | すべての音を(雑音含め)大きくする |
| 販売場所 | 専門の眼鏡店・補聴器店 | 家電量販店、ネット通販(楽天など) |
| 価格帯 | 高価(片耳5万~50万円) | 安価(5千円~3万円) |
| 医療費控除 | 対象になる場合がある | 対象外 |
「補聴器」をおすすめする人
補聴器は、医師から「難聴」の診断を受けた方が使う「医療機器」です。
専門家が聴力検査に基づき、「高い音が聞こえにくい」「この周波数だけ落ちている」といった個人の特性に合わせて、音を細かく調整(フィッティング)します。
メリット
- 自分の聴力に最適な「聞こえ」になる
- 雑音抑制機能(ピーピー音やエアコンの音など)が優れている
- 会話が聞き取りやすくなるよう、音質が調整される
デメリット
- 高価である
- 専門のフィッティングが必要で、購入後も調整に通う必要がある
【専門家コメント①:補聴器の重要性】
専門家: 「介護の現場では、集音器を使っていたが結局補聴器が必要になる、という方を多く見ます。集音器で一律に音を大きくする最大のリスクは、もともと聞こえている音(例:皿の音、ドアの音)まで不必要に増幅し、かえって耳を疲れさせたり、頭痛の原因になったりすることです。
補聴器は、ご自身の『残った聴力』を守りながら、足りない音だけを補うための投資です。自己判断で集音器を選ぶ前に、まずは耳鼻咽喉科を受診することが非常に重要です。」
「集音器」をおすすめする人
集音器は、難聴ではないが、一時的に「もう少し音が大きければ便利」という方が使う「家電(音響機器)」です。
単純にマイクで拾った音を大きくするため、会話も雑音も関係なく、すべての音が大きくなります。
メリット
- 安価で、楽天などですぐに購入できる
- 専門の調整が不要で、届いたその日から使える
- テレビの音を大きくしたい、など一時的な目的に使いやすい
デメリット
- 会話以外の雑音(食器の音、エアコンの音、紙をめくる音)も大きくなる
- 自分の聴力に合っていないと、うるさく感じるだけで会話は聞き取れない
- 長時間使うと疲れやすい
【専門家コメント②:集音器の適切な使い方】
専門家: 「集音器は医療機器ではなく、あくまで『音の補助器』です。例えば、『家族が寝静まった後に、テレビの音だけを自分に聞こえるようにしたい』『広いホールでの講演会で、演者の声だけを大きく聞きたい』といった、特定の場面で使うのには非常に有効です。
しかし、これを一日中つけっぱなしにして日常会話に使うと、『うるさいだけで、何を言っているか分からない』という不満が出がちです。すべてを増幅するので、脳が音を選別できず、かえって疲れてしまうのです。」
結局、どちらを選べばいいの?
選ぶ順番を間違えてはいけません。
ステップ1:まずは「耳鼻咽喉科(ENT)」を受診する
「聞こえにくい」と感じたら、自己判断は絶対に禁物です。まずは医師の診察を受け、「難聴」なのか、単なる「耳垢が詰まっている」だけなのかを診断してもらいます。
ステップ2:「難聴」と診断されたら「補聴器」を検討
医師から補聴器の検討を勧められたら、専門の「補聴器外来」や「認定補聴器技能者」がいる専門店に相談し、フィッティングを行います。
ステップ3:「難聴ではない」が、不便な時に「集音器」を検討
診断の結果、病的な難聴ではない場合。
それでも「テレビの音が聞きにくい」といった不便がある場合は、選択肢として「集音器」や、後述する「手元スピーカー」が候補に上がります。
【楽天で買える】おすすめの「聞こえサポート」機器
「補聴器」は専門医との相談が必要ですが、「集音器」や「関連機器」は楽天で手軽に購入できます。
ここでは、特に評判の良い「集音器」と、「意外な解決策」をご紹介します。
1.【集音器の定番】ソニー(SONY) 首かけ集音器 SMR-10
「集音器を試してみたい」という方に、まずおすすめされる定番モデルです。
- 特徴: 首かけ式で、イヤホンのように自然に使えます。
- 機能: ソニー独自の技術で、雑音を抑えつつ「人の声」を際立たせる「ボイスズーム機能」が優秀です。
- 専門家コメント: 「家電メーカー製と侮ってはいけません。これは非常に高性能で、集音器の中でも『補聴器に近い』と評されることがあります。『いきなり補聴器は抵抗がある』という方の、最初のステップとして最適です。」
2.【最強の解決策かも?】テレビ用 手元スピーカー
実は、「テレビが聞こえにくい」という悩みの多くは、「集音器」ではなく「手元スピーカー」で解決します。
- 特徴: テレビの音を、手元のスピーカーから出す機器です。
- 機能: テレビ本体の音量を上げずに、自分の耳元だけで音を大きくできます。「はっきり音」機能などで、ニュースやドラマのセリフを明瞭にする機能も搭載されています。
- 専門家コメント: 「介護現場でも、これは本当に喜ばれるアイテムです!ご本人はハッキリ聞こえ、ご家族は『テレビの音がうるさい!』というストレスから解放されます(笑)。部屋全体の雑音を拾う集音器と違い、テレビの音だけがクリアに届くため、満足度が非常に高いです。難聴でなくても、ご高齢の方にはまずこれをおすすめしたいです。」
まとめ
「補聴器」と「集音器」は、目的も価格も全く異なるものです。
聞こえに不安を感じたら、まずは耳鼻咽喉科で正しい診断を受けること。そして、ご自身の生活スタイルや「何の音を聞きたいのか」に合わせて、最適な機器を選ぶことが大切です。

コメントを残す